温州ミカンをアートに

温州ミカンをアートに

温州ミカンをアートに

ダイニングルームの窓枠をピクチャーフレームにして、四季折々変化する温州ミカンを自然のアートとして楽しむ。それはまた、外からの視線を遮る手段でもあります。

温州ミカンは下の方から幹が分かれて広がっているものが多く、扇形に作り易いと思いました。両親が植えた形の悪いミカンの樹を、植木屋さんに頼んで窓枠の形いっぱいに広げて作り直していきました。常緑なので、いつも窓の外に緑のスクリーンを作ってくれます。ハサミで刈り込めば、薄くも濃くも光の量を調整できます。

葉を透かせて光が降り注ぐ、みずみずしい新緑の美しさ。5月の白い清楚な小さな花から室内に流れ込む、柑橘系の花特有の何とも言えない素晴らしい、いい香り。
夏は強い光を遮ると同時に、もう濃い緑色の小さな可愛い実がなり始めます。雨上がりの後の、水滴のついた硬い緑色のピンポン玉のような丸い実の美しいこと。
そして、10月初旬から色づき始め、11月に入ると大きな窓いっぱいのオレンジの果実。それは、窓枠と言うピクチャーフレームの中で、季節と共に変化する自然のアートです。

我が家では、お正月には大きく実った温州ミカンを、緑の葉がついた枝ごと飾ります。そして、窓を開けて手を伸ばしてミカンをもぎ取って、今取ったばかりの果実を家族でいただきます。暖かい室内で家族揃って食べる、外気の中でキンキンに冷えたミカンの味。これほどおいしいものはない、と思う味です。この、お正月の庭のミカンの味、それを家族みんなで食べた思い出、そう言うものこそが、幸福と言うものだと思うのです。

日本では関東以西で温州ミカンを地植えする事ができます。たとえ温州ミカンを外で育てられない地方でも、それに代わる樹がある筈です。日本は世界でも稀を見る豊かな自然に恵まれた国です。古くから当たり前のように植えられてきた日本の樹も、それを造形美として見た時に、きっと自然のアートになるものがある筈です。

温州ミカンをアートに

ガーデンデザイナー 麻生 恵