木漏れ日を作る ガーデンデザイナー 麻生恵

木漏れ日を作る

木漏れ日を作る ガーデンデザイナー 麻生恵

Hannah Peschar のオフィス前の小さなコーナーです。
私達は誰もがこのコーナーに座って、お茶を飲んだり、本を読んだり、ゆっくりとした時間を過ごしたい、と感じます。
それは、このコーナーが頭上の葉を透かして注ぐ木漏れ日に包まれているからです。
ガーデンデザインとは光と影の立体空間をデザインする事です。何より大切なのは葉を透かす光です。
落葉樹は春に新しく葉が出てきますので、薄く、光の透過率が高いのです。落葉樹の新緑を透かす光はこのうえもなく美しく、透き通ったような緑の空気に包まれます。一方、常緑樹の葉は数年は枝に残っているので、葉が厚く、こんもりと茂っていると光を通すどころか光を遮り薄暗い空間を作ってしまいます。

木漏れ日を作る ガーデンデザイナー 麻生恵

これはイギリス南西部、コーンウォールにあるエデンプロジェクトの広場の一角です。
エデンプロジェクトは環境保護をテーマにした、植物と人間の関わりに焦点を当てた、
子供から大人まで楽しめる巨大な学べる施設です。

この頭上からの木漏れ日を作っているのはロンドンプレイン。いわゆるプラタナスの仲間ですが、イギリスでは街路樹としては勿論、あちこちに植えられている普通の木です。そのロンドンを歩くといたる所に使われている、この普通の木を並べて植えて半日陰の階段を作り、半日陰が好きな多年草が植えられています。この階段を歩いてみたい、そう私達が感じるのも階段に写る影、ロンドンプレインの葉を通す光に心地よさを感じるからです。

木漏れ日を作る ガーデンデザイナー 麻生恵

実はこの木漏れ日の階段は、何も遮るもののない、ピーカンの陽射しの芝生の中に作られています。この写真は夏に撮りましたが、広い芝生の上で子供たちが走り回っていました。
意図的にスロープに沿って、枝を大きく広げるロンドンプレインを植えて、木陰を作り、その下に階段を作り半日陰の好きな多年草を植える。最初から木漏れ日の空間をデザインし、それを創り出す事のできる樹木を植えているのです。

木漏れ日を作る ガーデンデザイナー 麻生恵

もう今は無くなってしまった、以前の我が家の庭です。
このレンガの小さな円形テラスもまた、木漏れ日に抱かれるコーナーをデザインしたものです。レンガに写る陰影は、頭上の桜が創り出しています。大きく枝を広げた桜の薄い葉を透かす光。この若葉を透かす光に包まれたくて、桜の樹冠の下に円形のテラスをデザインしました。

私はテラスやデッキを作る時に、限りなく木や植物に近寄る事をデザインします。葉を透かす木漏れ日に抱かれる空間を作るには、植える植物とテラスやデッキの構造を深く考えなければなりません。私にはこの木漏れ日の空間が何より大事なのです。

ガーデンデザイナー 麻生 恵