イギリスの庭を歩いていると、樹木が日本と違う発想で剪定されていて、それが美しいデザインになっている光景に出会います。庭を作る時、最初の段階から10年後、20年後の姿をデザインしている事に気づきます。その景色の作り方は、木の剪定の方法がベースになっていて、日本の剪定と違う発想に驚かされます。と同時に、その、樹木そのものをデザインすると言う手法が、日本の都会の庭作りに於いて問題解決の手段になると思うのです。
これは下が常緑のグリーンヘッジ(生垣)で、上が落葉の樹木です。落葉の樹木は枝を3本だけ残して横に伸ばしています。落葉の樹木は夏に太陽の光を遮り、冬は葉を落として太陽の光を通します。これを日本の都会に使ったら、夏は木陰を作り、冬は陽の光を室内に取り込む、それでいてお向かいの青いゴミバケツやお隣の自転車を隠せる。緑を使うことで、おだやかな、わざとらしくない庭が作れるのです。
これも、上の樹木は落葉で、下は常緑のラベンダーの組み合わせです。これは隠すと言うより、魅せるデザインです。
これに至っては何と、リンゴの木の枝を1本だけ横に伸ばし、上も詰めてしまっています。でも、ちゃんと沢山リンゴがなっているのです。リンゴの木は落葉、下の多年草もキャットミントで冬に地上部が無くなります。両方とも冬に葉が無くなるデザインです。無くなった時に、その向こうに広がる冬の景色を見せるようにデザインされているのかもしれません。
こんな風に、常緑の生垣をわざと丸く抜いて、その向こうに広がる景色を見せる遊び心溢れる手法もありました。こんな所では、面白い事に、人間と言うのは覗いてみるものなのですね。通る人みんなが覗いているので笑ってしまいます。そう言う私も覗きました。常緑の生垣の通路を歩いていて、ぽっかり空いた丸い穴、覗いてみた時に見えるデザイン性の高い景色に溜息がでました。木で作る魅せ場です。
こうして、木で隠す、木で魅せる、は私の中で都会の問題解決の手段を魅せ場に変える、と言う方向性に繋がっていきました。
ガーデンデザイナー 麻生 恵