イギリスの授業で、植物担当の先生Peter Thurman が言った言葉を今でも覚えています。Hosta(ギボウシ)は世界で一番完璧な多年草である。渦を巻くような形の芽吹き、ダイナミックなフォルム、葉の形。ギボウシは世界で一番完璧な形の美しい多年草だ。
ギボウシの主な原産国は日本、韓国、中国、です。そう、Peter Thurmanが言う、世界で一番完璧な形の多年草の原産国はこの日本なのです。日本では、ギボウシは山でウサギのエサだったりします。春、私達が好んで食する山菜のウルイもギボウシです。余りにも自然が豊かなので、ひとつずつの植物を造形美と言う切り口で見る事に我々日本人は不慣れです。
私達にとって当たり前のギボウシは、その造形的な完成度の高い美しさに気づいた欧米で盛んに改良が重ねられてきたのです。
これは Tom Stwert Smith がデザインした庭の入り口です。広大な庭の正面入り口の両側に列植されているのはギボウシです。このダイナミックなデザインを見た時には本当に感激しました。
このデザインを可能にしているのは立性ギボウシです。地面から茎がまっすぐ上に上がる形のギボウシです。日本では花の色や葉の模様ばかりが話題にされますが、大事なのは全体の形と大きさです。噴水のように立ち上がる形、こんもりとお饅頭のようにまあるくなる形、平べったく広がる形、垂れ下がる形、大事なのは全体の形です。そして大きさ。ギボウシには巨大なものから極小のものまで、とても沢山の種類があるのです。
これは巨大な大きさになるギボウシ。圧倒的な存在感です。ギボウシの横に立っているのは友達のAnna。ギボウシの大きさが判るように横に立ってもらいました。
Beth Chatto Garden で撮った写真です。
世界で一番完璧な形の多年草、ギボウシ。日本が原産国なのですから、イギリスの庭よりも日本の庭の方がずっと育てやすい筈です。もっと私達は上手にギボウシを使わなくては勿体ない。ギボウシは少し湿り気味で少し日陰の場所が好きです。先ずは、大きさを選び、どうデザインするかを決め、それに合った形のギボウシを選びます。
私は長野県にある育苗業者おぎはら植物園のカタログで選びます。ここは大型種、中大型種、中小型種、小型種、等と明記し、更に、葉の長さも40cm, 20cm, 7cm, 等と記載しています。届いた苗は小さいので1年ほどはポットで育て、ひと周り大きくしてから地植えしています。
日本が原産国の世界一完璧な形の多年草ギボウシ。それを造形美という切り口で見る時、私達の庭で使えるデザインは限りないのです。
ちなみに、Hostaの日本名ギボウシは、橋の欄干の上などにある装飾物「擬宝珠 ぎぼし」にツボミの形が似ていることに由来するそうです。
ガーデンデザイナー 麻生 恵