木で隠す、木で魅せる、と言う切り口でイギリスの庭を見た時、一番驚いたのは、ピラカンサのデザインでした。日本ではどこにでもある、暴れまくっているピラカンサですが、どう魅せるかを最初からデザインしたイギリスのピラカンサは、とても同じ木とは思えない美しさでした。
この石壁に薄く誘引された木がピラカンサだと気づいた時は目を疑いました。しかし、近くから見た時、それはまぎれもなくピラカンサでした。ピラカンサでこんなフォーマルな雰囲気をデザインできるのか、と時間を忘れて見入っていたのを覚えています。ちなみにピラカンサの下、黒い椅子の後ろに低く刈り込まれているのはツゲです。
これは私のとても気に入っている画像です。古い石壁に薄くピラカンサが誘引されて、表札を取り囲んでいます。表札自体に凝るより、シンプルな表札を緑が取り囲んでいる方が、光と影を作り出し、全体が景色となります。できあがる迄に時間はかかるでしょうが、こう言う住まう人の品性を醸し出すような表札が作りたい、と思います。
ピラカンサの一番の見せ場は、何といってもクリスマスが近づくと一面になる真っ赤な実です。クリスマスに窓を真っ赤な実が囲んだり、人を迎えるドアの横にクリスマスカラーの赤い実が鈴なりになります。初冬のイギリスに行く事があまりないので、気がつかないかもしれませんが、一年を通しての骨格として、イギリスではこの常緑のピラカンサがデザインされている事が多いのです。
ロンドンの街中でも白い小さな花が溢れるように咲いているピラカンサの生垣を見る事がよくあります。
そして、そのピラカンサをデザインする事の一番の目的は、クリスマスの頃に一面につける赤い実です。オレンジや黄色の実もありますが、クリスマスカラーの真っ赤な実が一番イギリスでは使われます。
日本では丸く剪定されるピラカンサですが、多分それは球体が一番表面積が広いので、沢山実をつけさせる為の剪定法であろうと私は考えます。しかし、丸く刈り込むと鋭い棘が剪定しようとする人間の方に向かってしまいます。植木屋さんは皆、ピラカンサの剪定を嫌います。しかし、イギリスのように薄く平らに横に誘引して行けば、鋭い棘は横に向いて生え、剪定する人間に向かってきません。
ピラカンサをデザインする、と言う事は日本に戻っての私のガーデンデザインの中で大切な要素となりました。
ガーデンデザイナー 麻生 恵