麻生恵 ガーデンデザイナー

日本でツゲをデザインする

イギリスの庭ではツゲを多用するので、私の中ではツゲはとても身近な素材です。
実は日本で言うツゲには、ツゲの櫛にする成長の遅い正真正銘のツゲと、生垣素材として一般的にツゲと呼ばれるモチノキ科のツゲがあるのですが、ここでは全てひっくるめて簡単にツゲと呼ぶ事にします。
日本で生垣素材としてよく使うツゲには、イヌツゲ、マメツゲ、キンメツゲ、があります。色々試してみましたが、私自身はイヌツゲが好きです。マメツゲは葉が豆のようにちょっとコロンとしています。キンメツゲは春の芽吹きが明るく黄色に見えるので、ポイントとして使うには美しいツゲです。私は他の植栽との関係でツゲはただ緑である事を好みますので、イヌツゲを使います。

麻生恵 ガーデンデザイナー

これは庭を作り始めた頃、実験的に植えたものです。背景の緑の壁はマメツゲです。手前にある三角錐のトピアリーは洋ツゲ、イギリスで多用するボックスウッドです。10年以上が経ち、寄せ植え材料コーナーで1個165円で買ったボックスウッドも立派なトピアリーになりました。実験結果としては、冷涼なイギリスで使うボックスウッドを高温多湿の日本で育てると、イギリスの3倍ぐらいの速度で育ちます。結果、葉がイギリスのより柔らかくなりハマキ虫が沢山つきます。日本には日本のいい植物があるのですから、気候風土に合った日本の植物を使うのが楽でいい、と私は思います。

麻生恵 ガーデンデザイナー

ロングポットに植えて10年以上、これも1個165円の寄せ植え材料ボックスウッドです。今ではアイビーを背景に、玄関入り口にあって堂々とした彫刻のような造形美です。左隅に見える階段と比べるとその大きさがお判りでしょう。しかし、前述の通りハマキ虫がつくので薬剤散布が度々必要です。あんまり綺麗なので、つい植え替えられずに10年以上経ってしまいましたが、本当は日本のイヌツゲで作るべきだと私も解っているのです。そろそろイヌツゲの苗を買ってきて丸く育て始めるべきですね。

麻生恵 ガーデンデザイナー

これはエアコンの室外機隠しに植えたイヌツゲ。細い1本立を買ってきて、透け感のある緑に作りました。

麻生恵 ガーデンデザイナー

そのエアコン隠しのイヌツゲが室内の白いソファーの後ろに見えます。窓越しに柔らかい緑の姿を見せるイヌツゲ、これがツゲだと判る方は滅多にいません。巷のツゲの生垣はたいてい堅そうで、間が無くなっていたりしています。どうしてうちのツゲはこんなにみずみずしく柔らかそうなのか、とよく聞かれます。それはちゃんと水をやっているから。それだけの事です。

麻生恵 ガーデンデザイナー

同じイヌツゲでもこれは生垣用ボサを使ったもの。生垣用に最初から数本が株立状に作られているので、時間をかけずに目隠し用生垣を作る事ができます。これも水をちゃんとやっているので美しい柔らかい緑です。

ガーデンデザイナー 麻生 恵