イギリスで初めてチューリップの美しさを知りました。まっすぐに上がった直線的な茎、その上に咲く、まるでゴブレットのような形の花。新緑の中にふっくらとした大きな花が空中に浮かぶ姿は造形美そのものです。
イギリスでは同色のチューリップが点在して植えられている春の庭によく出会います。昔、チューリップの球根は非常に高価であったために沢山まとめて植える事ができず、点在して植えた事に由来するようです。結果的に同色のチューリップが緑の中にデザインされて点在する姿は、芸術的な美しさを生み出す事になりました。
点在して植える事でひとつひとつが重ならず、そのまっすぐな茎の上にゴブレット型の花と言う稀に見る容姿の造形美が最大に活かされます。イギリスでは庭を直線と曲線の組み合わせでデザインしますが、曲線の花壇に植えられたチューリップはどの角度から見ても重ならずに見えます。
秋、チューリップの球根を買う時、気温が低い中でつい温かい花色を買いがちですが、実際に花が咲く時は新緑の季節だと言う事を考えて色を選ぶべきです。シルバーリーフの中に浮かぶ時は黒や濃い紫の花色、新緑の中に浮かぶ時には白やアイボリーが美しいものです。
我が家の円形テラスの周りには、背の高くなる白いチューリップを72球植えています。
夕暮れ時、空中に浮かぶように見える白いゴブレット型のチューリップの花は、とても幻想的です。
チューリップは実は大人の花なのです。
ガーデンデザイナー 麻生 恵